話の束

本業のかたわら、たまに本も書いています。それとは別で、きままにエッセイとか小説とか、ぽろぽろと書いてみたいと思いました。

マイナちゃんと旅立ったおさかな

 それから数日後、いつものように妻が洗濯物を干しているとマイナちゃんがやってきた。

「おねーちゃん!おねーちゃん!」

 そろそろあきらめだした妻は、洗濯物の手を止めて、ベランダの間仕切に近寄っていった。そもそもこの間仕切を超えられたらベランダから落ちそうになる。そんなことになったらとんでもない事故になる、という思いもあるらしい。

「どうしたの?マイナちゃん?」

 マイナちゃんは妻が近寄ってくるのを見て笑顔になる。

「あのね!マイナのお魚しゃべらないの!そんでどっかいっちゃった!」

 ちなみに私が妻に買ってきた洗濯ばさみである。それをなくしたことを自慢げに話されても困るのだが。

「そっかー。お魚さんは海へ帰ったのかなぁ?じゃあ新しいお魚さんの友達あげるね。」

「うん!」

 そしてマイナちゃんは(私が妻に買ってきた)洗濯バサミを3つほど新たに手に入れ、間仕切の向こうへと消えた。