話の束

本業のかたわら、たまに本も書いています。それとは別で、きままにエッセイとか小説とか、ぽろぽろと書いてみたいと思いました。

エッセイ

どれだけ苦しくても、経営者にメンターはいない

だいたいの年収が3000万円になって思うことがある。 僕が今成功している原因があるとすれば、それは単純に運がよかったからだ。 その上で、行動面で良いことがあったとすれば、それはなんだろうか、ということを考えた。 おそらくそれは3つある。 第一に、…

僕が期待を嫌う理由

自分が成功することはかけらも疑っていなかった。 けれど、期待されることは嫌だった。 だから僕は一人娘には、まあ、生きていてくれればいいや、というくらいにしか思っていない。 それ以外は好きにすればいいし、必要なら大抵のものは与えている。 妻がそ…

過去は忘れなければいけない

僕たちは過去を覚えていない。 誰かに思い出されるまでは。 過去の事実を思い出して、 過去の思いを思い出して、 そして時間を巻き戻してしまう。 僕たちは過去を忘れなければいけない。 思い出した過去を忘れなければいけない。 それは逆説でも風刺でもなく…

水の音と月を探していた

水の音を聴こうと歩き始めた。 夕暮れ時。会社を降りて進んだ先には川が流れている。 欄干にたどり着いたが、音は消えていた。 流れるように走る車の響きと、定期的に変わる信号の歩行者誘導の音とが響いていて、川はただ暗くあるだけだった。 じゃあ、と思…

B型だからね

僕はうつになる。 特に、大勢の人の前で、笑顔をふりまいたあとで。 ひとりでうつになる。 うつになると、肩もこるような気がする。 足は重くなり、心臓がどきどきする。呼吸もやばい。 そして、布団にもぐりこんで、ただ、寝る。 今週は、大勢の前で笑顔を…

敗北

自分が負けたとき、敗北を糧にできる人は強い人。だろうか。 自分が負けたとき、世間を責める人は弱い人だろうか。 あきらめたとき、現状に満足しようと生業を変える人は弱い人だろうか。 あきらめて、あきらめきれずに抗い続ける人は、強い人だろうか。 強…

東京は仮住まいのにおいがしすぎる

仕事柄、東京へやってくる。だいたい週に1回程度。 その都度、裏通りを歩く。 僕の仕事が一段落するのはたいてい夜半過ぎだ。 となれば遅い夕食の場所も限られてくる。 そうしてたどり着いた店には、いつもきまって同じような人たちがいる。 ぎりぎりまで話…

マイナちゃんとくーちゃん

「あなた、くーちゃんって知ってる?」 食卓で少し得意げに質問してくる妻。 それに対してふふん、と鼻で笑う私。 「マイナちゃんの犬のことだろ?知らなかったのかい?ふふん。」 そう答えた時の妻のしてやられた、という顔が目に浮かぶようだ。 そンな妄想…

マイナちゃんと旅立ったおさかな

それから数日後、いつものように妻が洗濯物を干しているとマイナちゃんがやってきた。 「おねーちゃん!おねーちゃん!」 そろそろあきらめだした妻は、洗濯物の手を止めて、ベランダの間仕切に近寄っていった。そもそもこの間仕切を超えられたらベランダか…

マイナちゃんとおさかな

その赤ん坊がいつのまにかしゃべるようになった。 なんでも、妻が洗濯をしているとほぼ確実にやってくるらしい。 「おねーちゃん!おねーちゃん!」 そう叫びながらベランダの間仕切の向こうから顔を出してくるという。 「どうしたのマイナちゃん?」 「おね…

赤ん坊の頃のマイナちゃん

マイナちゃんは、マンションの隣の家に住んでいる。 マイナちゃんの両親は私たち夫婦よりも少し年上のようだ。何度か挨拶した程度だが、どうもそんな感じだ。ただ、私は年よりもかなりふけて見られるらしいので、隣も同じことを思っているかもしれない。 う…

となりのマイナちゃん

マイナちゃんは三歳らしい。 2年前ははいはいしていたから、多分それくらいなんだろう。ただ正確なところはわからない。このあいだ、ベランダで妻と話しているときに割り込み、何歳かたずねてみた。 「マイナちゃん、いくつ?」 「くーちゃん!」 いつもの…