話の束

本業のかたわら、たまに本も書いています。それとは別で、きままにエッセイとか小説とか、ぽろぽろと書いてみたいと思いました。

窓の内と外

僕はベランダでたばこを吸う。

ベランダに出るとき、三つあるサッシを内側から閉める。

リビングと、寝室と、娘の部屋と。

「まだたばこ吸うの?」

妻と娘が僕に苦言を呈する。無視をして、後ろ手にサッシをしめて、らんかんにもたれる。

紫煙ににじむ夜景は僕の心をなぐさめる。

 

たまに、外からサッシを閉める。

ベランダに出てから、3つのサッシを閉める。

妻と娘は、僕に何も言わない。

そうして僕は、窓の外から妻と娘を眺める。

 

それは、手に入らない景色のように見える。

同じことを、別の手順でしているだけなのに。

 

そうして僕は、やっぱり煙草に火をつける。