話の束

本業のかたわら、たまに本も書いています。それとは別で、きままにエッセイとか小説とか、ぽろぽろと書いてみたいと思いました。

水の音と月を探していた

水の音を聴こうと歩き始めた。

夕暮れ時。会社を降りて進んだ先には川が流れている。

欄干にたどり着いたが、音は消えていた。

流れるように走る車の響きと、定期的に変わる信号の歩行者誘導の音とが響いていて、川はただ暗くあるだけだった。

じゃあ、と思い立って北へ向かった。ほとんど人が歩かない橋を二つ超え、左手に工場群を見下ろすと、桟橋にでた。

車たちの音から逃れようと橋の横を折れて海べりの遊歩道へ向かう。

す、と音が薄れていく。

流れるヘッドライトに慣れた目が暗さを余計に感じさせる。

ちゃぷり、と水の音がした。

河口近くでひかえめに打ち寄せる波が、砕けた廃材をゆらしている。

見下ろす目が暗さに慣れてきて、ゆれる水面に返す光がはかなくうつるようになる。

そうして僕は空を見上げた。

中秋をすぎたばかりの薄墨の空に、ずいぶんとほこらしげに出ている月。

とりあえず波止めに腰をおろし、タバコに火をつけた。

それから僕はまた、来た道を戻った。

 

 

 

B型だからね

僕はうつになる。

特に、大勢の人の前で、笑顔をふりまいたあとで。

ひとりでうつになる。

うつになると、肩もこるような気がする。

足は重くなり、心臓がどきどきする。呼吸もやばい。

そして、布団にもぐりこんで、ただ、寝る。

 

今週は、大勢の前で笑顔を振りまいた。

楽しく見えるように演技した。

そして大勢の人に喜んでもらえた。ようだ。

その笑顔の数だけ、僕は落ち込んでいく。

 

僕のそんな性格を、妻が理解してくれていることが、わずかななぐさめかもしれない。

僕が、目は覚めているのに、布団から出てこない朝。

呼吸だけ確かめて、そして何も言わずに去っていく妻。

そうして、ようやく起きてきた僕を、暖かい湯気と笑顔で迎えてくれる。

 

でもまぁ、それでも、うつはしんどい。

 

 

先輩や上司にダメ出しされたときに読んでほしいこと

明けない夜はないけれど、明けてみても暗い朝はある。

 

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先輩や上司にダメ出しされる時がある。

心は沈み、自分を否定したくなる。

そんなときに、考えてほしい。

 

すでに君は、先輩や上司にとって、嫉妬の対象になっているのかもしれない、ということを。

 

強力な味方ほど、最悪の敵になる。

 

君にダメ出ししたその人は、正しいだろうか。

もちろん君がダメなのかもしれない。

 

でも、君はそんな簡単な思いでそれを示しただろうか。

本気で示していないのだろうか。

 

君が本気であるほど、君は上司や先輩の言葉を無視しなくてはならなくなる。

 

君が何かを示すということは、君にとって上司や先輩が不要になるということだ。

君がその先頭に立つということだ。

 

そして、上司や先輩にしてみれば、君は脅威になっている。

君のことを認めるわけにはいかない。

そうすれば、自分の存在価値がなくなる。

 

疑ってみよう。

上司や先輩は正しいだろうか。

 

そして。

君が示した言葉は、否定されたからと言って引き下がるほど、あさはかなものだったのか。

 

自分を信じよう。

そして、自分を支えてくれるものが、自分しかないタイミングに来ているのかもしれない、と理解しよう。

 

 

頑張れない、10人の中の9人

頑張れない人がどれだけ多いことか。

 

今、目の前の、今日だけ。

それだけを頑張ればすべてが変わるのに。

 

多くの人はそれができない。

 

僕は仕事で、頑張れる人たちとお付き合いをする。

頑張れる人だけで、日本には1000万人以上の人がいる。

世の中の10人のうち1人は頑張れる人たちだ。

そんな人たちが明日の夢を描き、明日の世界をつくる。

 

でも、頑張れない10人のうちの9人も、今日を生きている。

 

彼らはバカじゃないから、頑張れない自分を知っている。

このままの自分が、10年後、20年後にどうなるのかを知っている。

 

でも彼らは頑張ることができない。

そして悲しみのあきらめのさびしさの歌を歌う。

 

救おうとしても、彼らは救われようとしない。

叱咤しても、彼らは改めない。

激励しても、彼らは起きることがない。

そうして、喜び、悲しみ、怒り、笑い、寂しみて、そして死ぬ。

 

でも、それが人間なんじゃないか。

進化して、改善して、変わろうとする方が異端なんじゃないか。

そう思うときがある。

敗北

自分が負けたとき、敗北を糧にできる人は強い人。だろうか。

自分が負けたとき、世間を責める人は弱い人だろうか。

 

あきらめたとき、現状に満足しようと生業を変える人は弱い人だろうか。

あきらめて、あきらめきれずに抗い続ける人は、強い人だろうか。

 

強さと弱さとは思いで変わる。

 

敗北を敗北にするのも、あきらめをあきらめにするのも、自分の思いだ。

 

弱い人は去ればいい。

強い人だけが、自分の世界をつくる。

 

ただ僕は、偽りの強さを壊し続けるけれども。